簿記2級を勉強する動機の一つに、就職や転職をしたいからという方も多いのではないでしょうか。資格を持っていると採用試験を有利に進めることができます。
実際、私も未経験から正社員に再就職することができました。
しかし、簿記2級を持っているだけでは、就職することは難しいのです。
この記事を読むと簿記2級が活かせる職種や実際の業務内容がイメージできるので、採用試験に受かる対策が立てられます。
この記事を書いたのは…
この記事を書いているのは、第151回・合格率12.7%日商簿記2級に合格しました。
改定後、連結会計が初めて出された簿記検定の合格者なので、信頼性もあると思います。
執筆・マコのより詳しいプロフィール
こちらが合格証明書です。
簿記2級があっても就職できない理由
簿記2級は持っているだけで採用されるほど強い資格ではありません。
宅地建物取引業免許のような国家資格とは異なり、簿記2級は民間資格です。持っていなくても経理職を行うことができる資格です。
就職には資格のほかに意欲や人柄、協調性も求められます。簿記2級+αが求められるのです。
1.全商簿記、全経簿記の評価が低いから
日商簿記以外の簿記資格、全商簿記、全経簿記での2級の評価は世間的に低いです。
簿記資格には日商簿記、全商簿記、全経簿記と3つの資格がありますが、同じ級でも難易度が違います。
就職や転職を目的として取得するなら日商簿記をおすすめします。
日商簿記は商工会議所が大元なので社会人向けの資格となり、全商簿記や全経簿記よりも難易度が高いのでブランド力があります。全商簿記の運営元は公益財団法人 全国商業高等学校協会で、高校生向けと言われる資格です。
一般的に日商簿記2級の難易度は全商簿記1級相当と捉えられています。
企業の人事担当者も難易度について理解しているため、実際に求人条件でも「日商簿記3級は必須 日商簿記2級あれば尚可」「全商は2級必須:1級があれば尚可/全経は2級必須/1級があれば尚可」など簿記の種類を分けて求人を出していることもあります。
就職や転職を視野に入れて簿記2級取得を目指す方は、迷わず「日商簿記」を選びましょう。
2.実務経験が必要だから
即戦力となる人を募集したい企業では実務経験がある人を積極的に採用しています。
簿記2級の他に採用で求められる条件には「高校卒業」や「実務経験3年以上」などが挙げられます。
簿記2級の資格取得時にはテキストベースでお金の流れを学びます。
しかし、企業のお金の流れはテキストより複雑ですし、ソフトを使って会計処理をしているケースがほとんどです。
領収書の回し方、入力の仕方、締め日など実務ができる人が求められている会社では、簿記2級を持っているだけでは採用されません。
3.人間力や働き方も選考ポイントだから
コミュニケーション能力や働き方も採用の基準になります。
簿記2級の資格を活かすために採用された時の配属先は経理課や財務課に配属されやすく、他部署との交流も必要な部署です。
例えば、経費として計上できない領収書が来た時には断らなければなりませんし、書類作成を期日に間に合わせるために営業部から領収書の請求を依頼しなければなりません。
円滑に他部署とやりとりをするためには人にお願いできる人や素直に受け入れられることなど人間力も必要です。
パート場合には月末に出勤日数を増やすことなど働き方があってこそ採用されます。
未経験でも簿記2級は就職に有利
簿記2級を取得すると未経験でも就職しやすくなります。実務経験が基準に達していなくても、子育てなどでブランクが5年以上あってもマイナス要素も少なくなります。
簿記2級は採用試験で評価される
「簿記2級を取得する能力がある」という評価を受けて、採用試験に挑めます。
企業側は新しい人材を採用する時にはスペックだけではなく、協調性など人柄や勤務条件など社風に合い、会社に利益をもたらす人を採用したいと考えています。その為、簿記2級を持っていても面接や採用試験でマイナス要因が多いと不採用になってしまいます。
ただし、簿記2級を取得した能力の高さや合格に向けて勉強できるプロセスが評価されることは間違いありません。とくに、経理部門や税理士事務所への転職・就職を考えている方には、取得すると採用率の上がる資格です。
簿記2級があれば、未経験でも採用されやすい
2022年現在、人手不足の影響もあり企業側は実務経験にこだわらなくなってきています。
会計事務所、税理士事務所、一般企業の経理の求人には、条件として日商簿記2級以上と記載がありますが、実務経験については「歓迎」や「あれば尚可」など必須条件としていません。
パートやアルバイトになると簿記3級は応募条件として記載されていることもありますが、簿記2級を必須としている企業は少ないです。特に個人税理士事務所や中小企業の経理課では簿記2級を持っているだけで採用に近づきます。
子供が小さいうちは1日5時間程度のパートから始めて、正社員採用になる道もあります。
簿記2級は必須、未経験者歓迎の求人例
簿記2級が応募条件の必須としている求人は税理士事務所や会計事務所、経理課の主任クラス以上の求人が多いです。求人窓口を増やすために、歓迎スキルとして簿記2級を記載している企業も増えています。
簿記2級は宅健などと国家資格とは異なり、民間資格なので簿記2級の資格がなくても実務をこなすことはできます。職場では資格よりも実務経験や向上意欲が求められます。
簿記2級が活かせる仕事
簿記2級が活かせる仕事や業務内容をご紹介します。簿記2級を取得した後の近い未来をイメージできると勉強にも身が入りやすくなります。
簿記2級が活かせる就職先
簿記2級が活かせる就職先は業種、職種を問わず多岐にわたります。
規模に関わらず、どの会社にも経理課やお金の流れを把握する部署があるからです。
日商簿記2級は“高度な商業簿記や原価計算を含む工業簿記の修得によって、財務諸表の数字から経営内容を把握できるようになります。また、前述をもとに企業活動や会計実務を行い、適切な処理や分析をするために必要なレベル”と定義されています。
勉強していく中で株式や子会社と親会社の関係、原価計算や利益の形状など会社の仕組みの全体像を学べるので、営業職でも数値的に強いプレゼンを作ることができるようになります。
簿記2級が優遇される部署
簿記2級を持っていると入りやすくなる部署は「経理部」と「財務部」です。
経理部
経理部は企業間やお客様とのお金の管理が日常的なメイン業務となりますが、その他に経営陣へ会計情報の提供、財務諸表・決算報告資料・財務申告書の作成などを月末や決算期に行います。中小企業でも大企業でも経理部は必ずあり、簿記2級の知識が活かせる部署です。
財務部
規模が大きい企業に設けられているのが「財務部」です。
企業が発展するために「お金を運用すること」がメインの仕事になります。例えば、「資金調達」「資金運用(投資・買収)」「財務戦略の立案」「予算編成」「事業価値の評価」など資金調達に関する知識も求められます。
最低でも百万円単位、規模が大きい会社では千万円単位で資金を運用するので、個人では経験できない資金の運用を行います。運用については別の専門知識が必要になりますが、記帳などの事務処理では簿記2級で学んだ知識が土台となります。
難易度は高いですが、やりがいもある部署です。
簿記3級が活かせる仕事
簿記3級を持っていると中小企業の事務員として採用されやすくなります。
個人経営の会社では事務職の業務内容が広くなり、中でも経理の知識を持っていると任せられる範囲が広いと考えられます。
簿記3級は“中小企業の会計補助職や小規模企業の経理職「基本的な商業簿記の修得や小規模企業での企業活動および会計実務を踏まえ、経理関連書類の適切な処理をするために必要なレベル」”と定義されています。
中小企業では経理部がないことも多く、その場合には事務員が電話応対から仕訳、接客、書類整理などあらゆる雑務をこなします。簿記3級資格を持っていると経理の知識があるとして採用されやすくなります。
簿記2級の業務内容
簿記2級の主となる業務の一つが「経理業務の代行」です。
お金の管理に関わる銀行業務として、売掛金・買掛金の入金管理、支払振り込み、引き落としなどの管理や、電子債権の発行や小口現金の管理などを担当します。弥生やfreeeなど経理ソフトを取り入れている企業ではある程度パターン化されているので、業務自体の難易度は低いです。
経理と総務を一緒にしている企業では上記の他に、残業代計算、有給管理、社会保険労務士への対応、日用品の発注など細かい雑務も業務内容に入れられています。経理だけを仕事にしたいなら経理部が確立されている企業を選びましょう。
製造業では工業簿記の知識が活かされる
製造業の事務員求人では工業簿記の知識が必要なので、簿記2級取得者を積極的に採用しています。また、税理士事務所ではクライアントが製造業であることも多いです。
原価率計算など工業簿記の知識も活かされる機会が多いです。
簿記2級で年収600万以上も可能
簿記2級取得者には資格手当がある企業も増えています。
ここでは、簿記2級取得者の平均年収と資格手当の相場をご紹介します。
年収は実務経験で上がる
年収は実務経験とスキルに合わせて、徐々に上がっていきます。
3年以上会計に関わる事務業務をすると、一通りの業務を一人でこなせるほか、多少のトラブルにも柔軟に対応できるスキルが身につくので年収が高くなります。
未経験の場合でも平均の最低年収は250万円と一般事務員の年収よりは30万円~50万円高いことが分かります。
実務経験 | 未経験 | 1年以上 | 3年以上 |
平均年収 | 250~350万円 | 300~480万円 | 350~650万円 |
年齢に合わせて年収も増えるというデータも出ています。簿記2級をベースにして社内で役職が付いたり、経験値が増えたり、より良い条件の会社に転職できるので、年収も増える傾向があります。
20代 | 30代 | 40代 |
500万円以下 | 350~600万円 | 600万円以上 |
簿記2級の資格手当
会社によっては簿記2級資格取得者に対して、毎月1000円以上の資格手当を出していることもあります。
毎月5000円の資格手当がつくと、1年で60,000円の昇給が見込めますので、通信講座を購入しても十分に費用を取り返すことができます。持っているだけで収入が増えるので、おすすめです。
より難しい簿記1級になると毎月20,000円の手当を出している求人もありました。難易度は上がりますが、簿記1級を持っているとあらゆる事務職や税理士事務所への採用確率は上がります。
資格手当の相場
日商簿記1級 | 日商簿記2級 | 日商簿記3級 |
1,000~7,000円(月) | 1,000~5,000円(月) | なし |
簿記1級なら大手企業への就職も可能
簿記1級の資格取得者であれば大手企業や上場企業への就職や転職の選択肢も出てきます。大手企業になるほど経理部や財務部が確立されているので、より専門的な知識を持つ方が求められます。
簿記1級は「極めて高度な『商業簿記』『会計学』『工業簿記』『原価計算』」と定義づけられており、合格率は例年10%前後です。人手不足なので簿記1級必須の求人は2021年現在見つかりませんでしたが、取得者が少ないのので、持っているだけで業種を問わず企業への就職が有利になると考えられます。
簿記1級の試験内容
簿記1級の試験範囲では東証1部上場のような大企業・グループ会社全体の決算処理を行う連結決算業務に関する問題も本格的に入ってきます。また、大企業では海外との取引も視野に入れる企業が多いので外貨換算会計と言って、手数料計算や通貨の換金に関する計算も出てきます。
簿記1級では個人企業、法人企業の経理業務を代行して処理する仕事で、主に「税務申告」「記帳代行」「決算処理」の業務を担当することになります。
簿記2級と比べても複雑で、想像しにくい範囲が試験範囲に含まれています。
簿記1級に合格する
簿記1級に合格するにも簿記2級や3級を合格した時と同様に「勉強時間の確保」と「効率的に勉強すること」が必要です。合格率と勉強時間をご紹介します。
合格率と勉強時間
簿記1級は1年に2回しかありません。宅建試験の1年に1回に比べれば、倍のチャンスがあるとも考えられますが、簿記2級は年に3回あるのに比べると少なく感じます。6月と11月の2回ですので、調整が必要になります。
1日に3時間以上勉強した時の各簿記に必要な勉強期間は以下のようになります。
・3級:約1~2カ月
・2級:約4~8カ月
・1級:約6カ月~18カ月
ただし、これはスクールに通った場合で、独学だと2倍、通信講座だと1.5倍の勉強時間が合格に必要です。実務経験があると内容を理解しやすくなるので、働きながら簿記1級取得への勉強をすると効率的です。
簿記2級に必要な勉強時間は【簿記2級の勉強時間は150時間~。未経験者は500時間~】をご覧ください。
簿記2級で就職・転職に成功するコツ
簿記2級を取得した後で就職や転職に成功するコツをご紹介します。
私も現在、自分の部署の採用担当もしているので、人事部目線での採用ポイントを具体的にお伝えします。
面接の台本を用意する
質問や自分のアピールポイントを事前に予想し、台本を作りましょう。面接に慣れている方以外は少なからず緊張しますので、シミュレーションすることで落ちついて話すことができます。
簿記2級が履歴書に書かれていると面接官の目を引くことになりますので、「なぜ取得しようと思ったのか(動機)」「取得する時に大変だったこと(乗り越える力)」を聞かれます。簿記2級を持っていても実務経験がなければ、即戦力にはならないので資格そのものよりも、資格取得に至るまでの過程が評価されやすいです。
例えば、取得する時に大変だったことでは、「働きながら時間を作るのが大変だったが、通勤の隙間時間を勉強に当てた」と答えると少ない時間を要領よく管理ができると評価されます。
好印象を与える身だしなみ
面接では清潔感のある身だしなみで挑みましょう。スペックや経歴以上に第一印象は大切です。一緒に働くなら気持ちよく仕事をできる人が求められています。
面接が決まったら美容院に行き、髪の毛は暗めのトーンにし、毛先の傷みを切ってもらいましょう。「髪形や髪の色は自由です」と求人には書いてあっても、どちらかといえば暗めのトーンで落ち着いて見える方を採用したいのが日本の人事部の本音でもあります。
入社してから社内規定の範囲内で髪の色を明るくする分には問題ありませんので、面接のときには髪色を暗く、艶っぽく見えるようにしましょう。
その他にも女性であれば職場の雰囲気に合ったメイク、スーツにし、靴やバッグなどの小物の汚れにまで気を配ります。普段濃いメイクをしている方は薄すぎるかな?と思うくらいでも大丈夫です。
色を載せるよりも肌のきれいさに注力した方が印象はよくなり採用されやすくなります。
1社で諦めない
最初の1社で不採用になってしまっても、あきらめずに応募と面接に挑戦していきましょう。
面接も履歴書の書き方も数をこなすほど慣れるので、緊張も落ち着きますし、話し方もうまくなっていくからです。
条件や職場の雰囲気がたまたま合わなかっただけのこともありますので、ご縁がなかったとあっさりと切り替えて次に進みましょう。簿記2級以上を取得していれば、売り手市場です。
自分が会社を選べる立場という気持ちで受けていきましょう。
簿記2級の就職まとめ
・簿記2級を持っているとライバルと差をつけることができるので、就職に有利に働く
・税理士事務所や企業の経理課を目指すのであれば、簿記2級は必須スキル
・簿記2級に対して資格手当を設けている会社もある
・簿記2級を持っていても会社との条件や雰囲気が合わなければ、不採用になることもある
・採用試験では「清潔感」「準備」「諦めないこと」が大切
・簿記1級を取得すると一部上場企業に就職することも可能なので、働きつつ取得を目指すといい
コメント